東京ジャーミイ金曜日のホトバ「個人の権利、公共の権利について」

金曜礼拝のホトバ

尊敬すべきムスリムの皆様!
ある日、預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)が、「破産者とは誰のことか、わかりますか」と教友たちに尋ねました。その場にいた共有たちは、「アッラーの使徒よ。破産者とは、金銭も財産も持たない者のことです」。
それを聞いて、彼はこう語りました。「本当の破産者は、復活の日、礼拝、斎戒、慈善と共にやってくるでしょう。しかし彼らは、その善行を使い果たしてしまいます。他人を悪口や中傷で傷つけ、他人の財産を不当にむさぼり、他人の血を流し、他人に暴力をふるっていたためです、彼らの善行は、彼らの手によって傷つけられた人のものとして清算されるでしょう。彼らの善行が清算に足りなければ、彼らの罪が清算として残されます。彼らは、地獄の炎に投げ込まれるでしょう」。[i]

親愛なるムスリムの皆様!
すべての人に、自分の財産と正当な収入を守る権利があります。ハラームなことに手を貸す者とは、法に則さずして財をなし、不正な取引をして客をだまし、雇われている人々に正しい取り分を支払わず、それにより彼らから盗み取る者のことです。人それぞれの価値、名誉、貞潔、信念とは、侵害されてはならないものです。権利の侵害のうちもっとも悪いのは、人の価値をおとしめ、中傷し、嘘や誹謗(ひぼう)を口にして人の評判に傷をつけることとされています。
尊敬すべきムスリムの皆様!
ムスリムであるためには、何ごとにおいても中庸の道を選びとり、人生のあらゆる場面において良心的で正しくあることが求められます。ムスリムであることの最も顕著なしるしとは、自分自身の権利と、周囲の人々の権利を守ることにあります。私利私欲のために、他人の権利や、動物や自然などの権利を侵害する者は、たとえそうすることで最初は利益を得ているように見えていても、最終的には破産者となってしまうのです。
親愛なる信仰者の皆様!
個人の権利の影響をじかにこうむるのが公共の権利の領域であります。公共における権利や、個人の権利と比べてより多くの責任を求められるものです。公共の権利を守らないことは、現世と来世の両方において人々を挫折へと引き入れてしまいます。これについてアッラー(スブハーナ ワ タアーラー)は、次のように告げておられます。「預言者が[人間を]欺くことはない。誰であれ欺く者は、復活の日、自分が欺いたことと共に連れ出されるだろう。すべての魂は、それが得てきたものに応じて十分に報いられ、不正に扱われることはない」。[ii] 同様に預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)も、そのウンマに対して次のように警告しています。「わずかでも他人の土地を不当に取り上げた者は、復活の日、七つの大地に沈められるだろう」。[iii] また別の時には、「」とも語っています。 「仕事を割り当てられ、その対価を受けとっている者が、その対価以外に受け取るものはすべて信頼に対する裏切りとなるでしょう」。[iv]

親愛なるムスリムの皆様!
正義に基づく関係こそが、現世の平和と来世の救済への導きであるということを忘れずにいましょう。自分の私的な生活においては、他人の権利を侵害することのないよう気をつけましょう。すべての善行に報奨があるのと同じように、すべての過失や間違いは、個人や公共の権利の侵害を引き起こすもととなるという事実を知り、その上で日々を過ごすようにしましょう

[i] Muslim, Birr, 59.
[ii] Al-i ‘Imran, 3/161.
[iii] Muslim, Musakat, 141.
[iv] Abu Dawud, Haraj, Fay’ wa Imara, 9-10.


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