東京ジャーミイ 金曜礼拝のホトバ「職業生活における祝福:労働の倫理について」

親愛なるムスリムの皆様!
崇高なアッラー(スブハーナ ワ タアーラー)の御前においては、職業上の上下関係がそのまま特定の人物の特別な地位につながるようなことはありません。アッラー(スブハーナ ワ タアーラー)の御前において、人の価値を決めるものとは信仰、崇拝、道徳、そしてタクワ(敬神)に他なりません。預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)は、次のように警告しています。「アッラーはあなたがたの外見や財産を見ておられるのではない。ただあなたがたの心と行いとを見ておられる」。  [i]

親愛なるムスリムの皆様!
アッラーの使徒(彼の上に祝福と平安あれ)は、雇われる者と雇う者、上司と部下との関係を「きょうだいどうしの関係」としてみなしていました。愛情と尊敬、思いやりとやさしさ、連帯と協力こそはきょうだいどうしの関係に欠かせない要素です。
アッラーの使徒(彼の上に祝福と平安あれ)の警告に耳を傾けるなら、雇う者は雇われる者の権利を尊重するでしょう。安心して働ける環境を整え、礼拝や休憩といった、労働者がその必要を満たすための機会をもうけるでしょう。働いた時間に見合った賃金を支払い、実現できないようなことを仕事として押しつけたりしません。働く人々の健康や生活を危険にさらすようなこともしません。自分が雇った人々のことを、自分に預けられた信託としてみなし、彼らについて、アッラー(スブハーナ ワ タアーラー)に対する責任があることを考慮に入れて行動することでしょう。

尊敬すべき信仰者の皆様!
職業生活においては、雇われる者もいくつかの責任を負っています。ムスリムであれば、預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)の助言に従ってそうとふさわしい働きをするでしょう。自分が働いている職場や、職場にある資材や財産を、わがこととして大切に守ろうとするはずです。職場の資材や財産を、自分の個人的な目的のために利用するようなことはしないでしょう。効率よく質の高い仕事をせずにいれば、結果として自分の労働の対価が下がるだけということを承知しているはずです。

親愛なるムスリムの皆様!
全能のアッラー(スブハーナ ワ タアーラー)は、聖クルアーンを通して次のように告げておられます。「かつてわれらは人間を創造した。その魂が何をささやくか知っている。われらはその頸動脈よりも[人間に]近い。見なさい。一対の見張り[の天使]が、右に、左に構えて[人間の行いを]見張っている」。[ii]

私たちはアッラー(スブハーナ ワ タアーラー)からのこの警告に沿って、職業生活だけではなく、人生のあらゆる場面において奉仕の精神を持つように心がけましょう。法にかなったやり方で働き、利益を得られるよう努力しましょう。職業人のひとりとして、漫然と仕事をこなすのではなく、部下や同僚、あるいは上司に対し、美徳や誠実さ、忠実さや、労なくしては得るものもないこと、ハラールな利益の価値などについても教え合うようにしましょう。謙虚さとすぐれた道徳を発揮するようにしましょう。イスラムの同胞意識と預言者の知恵に基づく職業上の倫理を、私たちの時代に取り戻すようつとめましょう。

[i] Muslim, Birr, 34.
[ii] Qaf, 50/16-17.


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