リファット・チナル(東京ジャーミイ イマーム)より ムハッラム月とカルバラーに寄せるメッセージ

Muhammet Rıfat ÇINAR

リファット・チナル(東京ジャーミイ イマーム)より
ムハッラム月とカルバラーに寄せるメッセージ

イスラーム暦の最初の月はムハッラムといいます。ムハッラムとは、畏敬の念に値することを意味します。この月は美徳と恩恵、神的な豊かさと祝福に満ちています。このことについて預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)は、ラマダーン月以外に行う斎戒のうち、もっとも価値のある斎戒とはムハッラム月のそれであると教えています。

預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)がマディーナに移住したときのことです。彼はユダヤ教徒の人々がアーシューラーの斎戒をしているのを見て、その理由を尋ねました。ユダヤ教徒の人々は次のように答えました。「今日はアッラーがフィルアウン(パロ/ファラオ)とその民を溺れさせ、ムーサー(モーセ)とその民を救ったすばらしい日です。ムーサーはこの日、アッラーへの感謝のしるしとして斎戒をしていました。それで私たちもそのようにしています」。するとアッラーの使徒は、「私は、あなたがたよりもムーサーに近しい」と答えました。そして自分のウンマにも、ムハッラム月9日と10日、または10日と11日の二日間は斎戒をするよう勧めています。

アーシューラーはまた、大きな悲劇であるカルバラーの事変が起きた日でもあります。この出来事は、私たちの心に残された忘れることのできない傷です。ムハッラム月10日、預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)に「この世におけるわが芳香の花」とも、「楽園の若者の長」とも呼ばれていた愛孫のフサインと、七十名を超えるムスリム ― そのほとんどが預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)の親族でした ― が、カルバラーにて虐殺され、殉教しました。フサインも、彼と行動を共にした人々も、不正と迫害に対して勇敢に立ち上がり、真実の名の下にまっすぐに歩んだという点において、すべてのムスリムの心の中に永遠に生き続けています。対して彼らを、あえて迫害される側に追いやった人々は、すべてのムスリムの意識下における牢獄につながれ続けています。

カルバラーの事変は、ムスリムのウンマと私たちの歴史が伝える心の傷であり、私たち全員が共有する悲しみです。過去の恐るべき悲劇から十分な教訓を得られず、現代のイスラームにおける地政学上に、欲望や利己主義による新たなカルバラーの発生が続いているのは何と悲しむべきことでしょうか。カルバラーと聞けば胸を痛め、フサインの名が呼ばれれば嘆きのため息をつく全ムスリムのすべきこととは、カルバラーについて正確に学び、理解することです。タウヒードとワフダの精神を保ち、将来におけるカルバラーの発生を防ぐために絆と連帯を守ることは、私たちの集団としての義務です。正しいことのために立ち上がり、真理の探究につとめなくてはなりません。煽動の時代においては先見の明を持ち、洞察力を用いて現実を見つめなくてはなりません。迫害や不正に対しては、フサイン(アッラーのご満悦あれ)のように立ち向かわなくてはなりません。

この場を借りて祈ります。殉教者の長フサインと、尊ばれるべき価値観のために自らを犠牲としたすべての殉教者のために、全能のアッラー(スブハーナ ワ タアーラー) の慈悲がありますように。

ムハンメット・リファット・チナル
東京ジャーミイ イマーム


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