東京ジャーミイ 金曜礼拝のホトバ 「タクワ(敬神):最も優れた備え」

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尊敬すべきムスリムの皆様!
預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)が、年若い教友のひとりムアズ・ビン・ジャバルをイエメンへの使者として送り出したときのことです。見送りの挨拶のため、彼はムアズと共に立ち、いくつかの助言を与えました。預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)は、馬上のムアズのとなりを歩いていました。助言の最後に、預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)は次のように語りました。「ムアズよ!おそらく来年には、私とあなたがふたたび相まみえることはないでしょう、あなたがこのマスジドか、私の墓に訪れてくれるのでもない限りは」。その言葉を聞いたムアズは、預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)と引き離されてしまうのを悲しんで泣き出してしまいました。するとアッラーのみ使い(彼の上に祝福と平安あれ)は、メディナの方に顔を向け、次のように語りました。「私の目から見て最もすぐれている人とは、それが誰であろうと、どのような地位や権威を持っているかに関わりなく、ただタクワ(敬神の念)を持っている人です」。[i]

親愛なるムスリムの皆様!
人はタクワを通してのみ、主の慈悲と保護という栄誉に預かることができます。全能のアッラー(スブハーナ ワ タアーラー)は、次のように告げておられます。「信じる人々よ。あなたがたは、畏れるべくしてアッラーを畏れなさい。御方に自らを委ねることなくして死んでしまってはならない[ii]

親愛なるムスリムの皆様!
預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)は、ある日にはご自分の胸を指さし、「タクワはここにある」と、三回、繰り返しています。[iii]タクワが心の中にあるのは確かなことです。しかしタクワとは、身体や言葉、行動にも反映されるものです。タクワがもたらすやすらぎの効果は、私たちの礼拝や善行、すぐれた道徳におのずとあらわされるものです。邪悪なもの、禁じられているものを遠ざけ、正直さや誠実さを通して成長し、完成に達するとき、私たちのタクワの意識も高まります。
タクワとは、ムスリムにとり盾(たて)のようなものです。それは心で感じ取るおののきであり、意識で聞き取る声であります。それは罪に対する防壁であり、美徳への架け橋なのです。タクワを持ったムスリムは、それによって誘惑や悪徳から自分の心を守り、禁じられている嘘や中傷から自分の舌を守ります。不公正から自分の手を守り、邪悪を競い合うことから自分の足を守るのです。故意に罪を犯すことについては言うまでもなく、罪になるおそれのあることに対して二心(ふたごころ)を持ったり、近づいたりすることすらしません。本当に敬虔なムスリムなら、アッラー(スブハーナ ワ タアーラー)の戒めと禁止を守ることが、現世の幸福と来世の救済をもたらすことを知っているからです。

親愛なる信仰者の皆様!
全能のアッラー(スブハーナ ワ タアーラー)は次のように告げておられます。準備をしなさい。しかし、最良の準備とはタクワである。だからあなたがた分別をもつ者は、われを畏れなさい[iv]
ですから、いずれは消え去るつかの間の現世における人生を、タクワによって豊かにしましょう。邪悪については避け、善を行い、善であり続けるようにしましょう。私たちのナフスの決して満ちることを知らない欲望を満たそうとしたり、シャイターンに欺かれたりすることで、自分の人生を台無しにすることのないようにしましょう。やがて自分の口から出たすべての言葉、自分の行ったすべての行動について申し開きをしなくてはならない日が来るということを忘れないようにしましょう。本日のホトバを、預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)の次のハディースをもって終わります。「あなたが誰であろうと、アッラーに対するタクワを持ちなさい。 そして知ると知らざるとにかかわらず悪事をはたらいてしまったときは、善事をもって浄めるようにしなさい。そして人々に対し、良い態度でのぞむようにしなさい」。[v]

[i]Ibn Hanbal, V, 236.
[ii] Al-i ‘Imran, 3/102.
[iii] Ibn Hanbal, III, 134.
[iv] Baqarah, 2/197.
[v] Tirmizî, Birr, 55.


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