東京ジャーミイ 金曜日のホトバ「世俗化:つかの間の現世に喜びを求めることについて」

Friday Khutba

尊敬すべきムスリムの皆様!
預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)が、バーレーンの人々と平和協定を交わし、その地に使者をつかわしたときのことです。しばらくして、使者は多くの品々を持ってマディーナに帰ってきました。アシャブ・キラムが、興味深げに使者と多くの品々に近寄ってきていました。マスジドから出てきた預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)は、その様子を見ると微笑んでこう語りました。「あなたがたにとり喜ばしいものを喜び、また望みなさい。アッラーにかけて。私は、あなたがたの貧しいことを恐れない。しかしあなたがたが、過去の民のように贅沢な生活を送り、彼らのように互いに贅沢を競い合い、そして彼らのように互いを滅ぼし合うことを恐れる」。[i]

親愛なるムスリムの皆様!
世俗化とは、人々が現世のことに野心を燃やし、アッラー(スブハーナ ワ タアーラー)と来世に無関心になることです。アッラー(スブハーナ ワ タアーラー)に対する責任を無視し、現世のことだけを気にかけることです。宗教的な信条、価値、ふるまいを、自分の人生の中心から離れたところに置き去りにすることです。まるで自分が永遠に生きるかのように、現世のあらゆるものを欲しがることです。こうした人間の誤った状態について、アッラー(スブハーナ ワ タアーラー)は次のように告げておられます。「しかしあなたがたは、現世の生を好む。来世の方こそ最良であり、永続するものというのに」。[ii]

親愛なるムスリムの皆様!
世俗化がもたらす損害の最たるものは、無意識のうちになされる消費であります。過剰で行き過ぎた消費は私たちの人間性や価値観を損なうものです。無意識の消費と無責任な支出のために生じた負債と利息の沼で、多くの人々が苦しんでいます。その家族もまた、不安と無力感で苦しめられています。しかし預言者ムハンマド(彼の上に祝福と平安あれ)は、何世紀も前から人々に警告していました。「『私の財産、私の財産』とアーダムの息子は言う。しかし自分が食べたり使ったり、身に着けたり、それにふさわしい者に慈善を施したり、あるいは自分自身の備えとして所有する以上の富を、どうして自分のものにできるだろうか」。[iii]

尊敬すべきムスリムの皆様!
現世と来世の間の繊細なバランスをとることができていたなら、無駄遣いするかわりに気配りの届いた支出ができていたでしょう。貪欲さや野心のかわりに満足を、不安のかわりにアッラー(スブハーナ ワ タアーラー)に頼ることを、余分なもののかわりに十分なものを得ることができていたでしょう。現世と来世の生に対し、その価値にふさわしく意義のある取り組み方をしなくてはなりません。現世の生はほんの一瞬のまばたきのようなものに過ぎないことを忘れないようにしましょう。来世における永遠の生のために備えましょう。あらゆるものごとや行為において、謙虚でつつましく、また穏当であるようにつとめましょう。
このホトバを、全能のアッラー(スブハーナ ワ タアーラー)の御言葉をもって終わります。 あなたがた人間よ。本当に、アッラーの約束は真理である。だから現世の生に欺かれてはならない。アッラーについて欺く者に、欺かれてはならない[iv]

[i] Bukhari, Maghazi, 12; Muslim, Zuhd, 6.
[ii] A’la, 87/16,17.
[iii] Muslim, Zuhd, 3.
[iv] Fatir 35/5.


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