【講演報告】特別講演:次世代を担う若いムスリムへのメッセージ

【講演報告】特別講演:次世代を担う若いムスリムへのメッセージ

9月17日、トルコ共和国宗務庁 アリ・エルバシュ長官(Prof. Dr.)による「特別講演:次世代を担う若いムスリムへのメッセージ」が行われました。講演の内容(日本語訳・暫定版)は以下の通りです。


親愛なる若者の皆さん、

本日、私は大きな興奮とともに、日本に住む様々な国籍のムスリムの兄弟姉妹たち、特に「東京ジャーミイ」のコミュニティと一緒にいることを嬉しく思います。

皆さん、青春の時期は人生の中で特別であり、刺激的でエネルギーに溢れています。若い方々は、社会にとり最大の財産であり、また将来への希望でもあります。

社会を未来へと連れてゆく興奮は、若者だけが持つ特権です。若者は、アッラーの御目にも特別な価値を持っています。 

審判の日に恐怖することなく安全でいられる7つの集団があります。そのひとつが、預言者ﷺと共にあり、アッラーを崇拝する若者です。

そしてアッラーにとり、一番大切なのは、その人が何を追い求めているかです。

人種、国籍、地位、裕福であるか、困窮しているか、外見や肌の色の差を問わず、アッラーにとって重要なのは、アッラーを畏れ、意識する気持ち、ただタクワーだけです。

皆さんは現在、人生の中で最もすばらしい青春という時期を過ごしています。あなた方にとり重要な責任とは、青春をより実りあるものにし、貴重な時間を大切にし、正しく有効に使うことです。

皆さんは、今いるこの現世の未来です。また、皆さんにはさまざまな義務があります。学問においては教育を受け、あらゆる意味で自分を向上させ、成功に目指す必要があります。

そうすれば、社会に出たときには尊重される立場を得て、正しい知識を身に着けたムスリムとして、自分の住んでいる社会の役に立ち、貢献できる人材となれることでしょう。

あなた方は他の国にはない文化と特徴を持った日本という国で生活していますが、そのことはあなた方の財産です。自分のアイデンティティや文化を失うことなく、日本の社会に有益な存在となれるよう努力してください。

また、皆さんは、自分の国や文化と日本社会の、そして他国の社会との間の架け橋となれる存在です。橋としての役割を保つには、いつ・どのようなときも揺らがないよう、力強くなければなりません。

そのためには、このジャーミイがあります。ここは礼拝だけでなく、知識を深めると同時に絆と連帯を強くする、社会的・文化的な活動が行われる場所でもあります。 ここはまるで預言者ヌーフの箱舟のような役目を担っています。

東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センターも、皆さんと共にこの道を歩み始め、掲げた理念を達成するために、イスラームの講義、集会、教育活動を精力的に提供することでイスラームを引き継いでいくでしょう。そのようにして価値観を守り、ムスリムの若者とその社会がしっかりとした土台の上に築かれることを可能にします。

皆さんがコンパスのように、自分のアイデンティティと信念のルーツをしっかりとした軸にできたなら、もう一方の足で他の文化や考え方、価値観に対しては尊敬と寛容の気持ちを持ちつつ、開かれたダイナミックな関係を築ける人になれるはずです。

あなた方がイスラムの旗を掲げ、未来をリードしていくことを誇りに思っています。現世の誘惑に迷わされず、最先端の教育水準と適応能力を向上させ、社会の平安を大事にする、このように強く自信に満ちた若者が集まる場所としてジャーミイが日本に存在することを、誰もが誇り思うべきだと私は信じています。

皆さん、あなた方は足跡(そくせき)を残す若者でなければいけません。預言者ﷺの教友であるアリー(r.a.)のお名前を耳にしたとき、私たちの心がときめくのは、彼がイスラームの歴史に足跡を残した若者として記憶されているからです。あなた方も貢献によって足跡を残せるなら、アリー(r.a.)やファーティマ(r.a.)を引き継ぐことができるでしょう。

そのためには、クルアーンが私たちの心に入っていない状態に陥ることのないよう、しっかりと読み、そして行動し、学び続けることが必要です。

私たちは、クルアーンを正しく理解し、日常生活の中で最善の形で実践することによってイスラームを体現できます。クルアーンを理解するためには、書物などを通して様々な知識に触れることです。そうすることによって、より正しいムスリムに近づくのです。

ワクフ、つまり財団とは、ムスリムが互いに助け合い、連帯を維持するために預言者ﷺがマディーナに設立した、最も重要な組織のひとつです。私たちの文化は、同時にワクフの文化でもあります。ムスリムは、「託されたなら、これに従う」というハディースに基づいて生活を送り、原則となる習慣に従い、預言者のスンナを履行し続けなければなりません。それは私たちが、預言者ﷺからイスラームの信仰と実践を託された後継者だからです。

どんな職業を目指すにせよ、なすべき仕事をきちんと果たすムスリムとなることです。自分の住む社会に対し、私たちの宗教を最もよく示す世代となることが最大の目標です。科学、芸術、商業、教育の分野で存在感を示し、成功するよう努力しなくてはなりません。

あなた方がワクフの伝統を引き継いでいることは、「東京ジャーミイ・ユース」の活動やコミュニティに参加し、積極的に努力している点に表されています。協力し合って立案・実行された様々な活動は、やがてすぐれた結果として返ってくることと思います。

日本という場所ではマイノリティであろうムスリムは、皆が社会、学校、施設、職場では多かれ少なかれ孤独であり、それがどれほど困難なことかよくわかります。しかしだからこそ、ルールや壁の厳しい日本において孤軍奮闘しているその姿は、それ以外のムスリムにとっての価値が高いのです。

今日の若者をよりよく理解し、問題の解決策を見つけるために、私たちはあなた方の声にもっと耳を傾け、あなた方と共に歩んでいきたいと思っています。覚えておいてほしい最も大切なアドバイスは、どのようなささやかな行いにおいても、イスラームの品位、礼儀、そして優雅さを保たなければならないということです。

あなた方の知るイスラームの美しさを、あらゆる手立てをもって活かし続けてください。善行を増やし、悪行を減らすよう努めてください。有益なことのために働き、そのためには惜しまず助け合うようにしてください。

日本のように、ルールを守ることに細心の注意を払う社会において、あなた方はその行動、態度、知識、経験によってイスラームを代表し続けています。そのようなあなた方に私が願うこととは、社会において望まない否定的な経験をしようとも、その影響に惑わされることなく、常に情熱をその心に生かし続けてほしいということです。

あなた方の善良な道徳を見て、ムスリムではない人の心に愛が芽生えたなら、その報酬はあなた方のものです。逆に、あなた方を見てイスラームへの憎しみが他人の心にわいた場合は、それはあなた方と私たち全員の罪になります。この繊細な分かれ目に細心の注意を払いましょう。クルアーンやスンナに基づく本物の宗教的知識を指針とし、青春とは私たちに預けられた信託であることを忘れずに、どこでどのように青春を過ごすかに注意を払いましょう。後悔が何の役にも立たない審判の日について、今からでも自分自身に向き合い、心の在り方を見直しましょう。人生においてもっとも輝いているこの時期を、アッラーの意に沿えるよう努力し、アッラーに真摯に仕えることができるよう歩んでください。