尊敬すべきムスリムの皆様！
高潔な人格と甘美な舌を備えた最後の預言者ムハンマド（彼の上に祝福と平安あれ）のウンマ（共同体）に私たちを受け入れたもう全能のアッラー（スブハーナ ワ タアーラー）に尽きることのない感謝と讃美がありますように。平安と慈悲の使者として、全世界への信託としてアッラーが遣わしたもう預言者ムハンマド（彼の上に祝福と平安あれ）に、敬意とサラームが届けられますように。
親愛なる信仰者の皆様！
預言者ムハンマド（彼の上に祝福と平安あれ）はすべての人々を平安と救済に招く者であり、またすべての人々が不正を犯したり、反抗的にふるまうことのないよう助け、警告する者でもありました。彼は「ムスリムは何を信じるべきか」「ムスリムはどのような人生を送るべきか」といった問いに対する完璧な生きた回答であります。彼は愛情、思いやり、誠実さ、勇気、先見の明といった美徳を体現しています。彼は弱い者や貧しい者、何かの犠牲になった者たちが人間として手にするべき当然の尊厳を回復しました。彼の周囲にあっては、彼をなき者にしようとした人々でさえ、彼の愛情にふれることで正しい道へと導かれてゆきました。無知と抑圧がはびこり、寛容や美徳、知恵に欠けた暗黒の時代は、彼の到来と神聖な努力のおかげで、知識、正義、慈悲の光のもとに至福の時代（アスル・アッ・サーダ）になりました。ジャーヒリーヤ（無明の時代）の渦の中、自分自身の歩むべき道や美徳を失っていた人々は、彼の道に従うことにより、同胞愛や道徳、数々の約束の順守、またあらゆる善行における最良の模範となってゆきました。
親愛なるムスリムの皆様！
これについて、彼は「私は、道徳的にすぐれた人格を完成させるために遣わされた」[i] と語っています。彼の人生は数えきれないほどの美しい言葉と行為に満ちています。「人間はみなアーダムの子であり、そしてアーダムは泥から創られている」[ii] と語り、アッラーの御前ではすべての人間が平等であること、優劣を決めるのはただ敬神の念（タクワ）のみであることを宣言したのも彼であります。彼と話す際に興奮のあまり声をふるわせている者に対し、「恐れることはない。私は、干からびた肉を食べていた母から生まれた、一人の人間に過ぎない」[iii] と語りかけ、このウンマの一人ひとりが謙虚であるよう教えたのも彼であります。現世におけるつかの間の祝福よりも、「アッラーよ、あなたからの導き、信仰の深さ、貞潔さ、そして充足を求めます」[iv] と祈り、アッラー（スブハーナ ワ タアーラー）のご承認を追い求めるよう助言を与えたのも彼であります。
親愛なる信仰者の皆様！
全能のアッラー（スブハーナ ワ タアーラー）は、クルアーンにおいて次のように告げたまいます。 「あなたがたには、すでにアッラーの使徒という、アッラーと終末の日に希望を託し、アッラーを多く想い起こす者への最善の模範がある」。[v] ですから私たちは預言者ムハンマド（彼の上に祝福と平安あれ）についてより多くを知り、より深く理解し、彼の偉大なスンナ（習慣）が自分の人生の中で重要な役割を果たしているかを確かめましょう。彼の精神に沿って自分の思考を形づくり、彼の道徳をもって自分の心を浄めましょう。私たちの生活のあらゆる場面において、彼が決して妥協することのなかったすべての原則を守るようにしましょう。私たちの信仰と人間性は、彼を模範とする限り、必ず待ち望んでいた良い日々へと私たちを導くであろうことを忘れずにいましょう。
[i] (Ibn Hanbal, II, 381)
[ii] (Tirmidhi, Manaqib, 74)
[iii] (Ibn Majah, At’imah, 30)
[iv] (Muslim, Dhikr, 72)
[v] Ahzab, 33/21.